毎年「個人電子出版くるくる詐欺」が横行していますが、波は来ていません。佐々木俊尚さんの予言書からすれば、そろそろ来るはずです。
しかし、時代背景とインフラも整っている中、なぜ浸透しないか。そこに足りないのは「前例」だと思っています。
いつになったら電子出版の流れは来るのか?
『電子書籍の衝撃』の中で著者・佐々木 俊尚さんは、これからの出版スタイルについて以下のように述べていました。
出版社はこのような小さなチームを結成して軽々と電子ブックの世界を渡っていくような方向性に進まなければ、おそらくは生き残っていけないのではないかと私は考えています。
その究極の進化系は、フリーの編集者とフリーのデザイナー、そしてフリーの書き手がフリーランス連合を組んで一冊の本を作り、売れた分だけ60%の印税をレベニューシェアするようなチーム編成かもしれません。
つまり、個人が繋がって出版社を介さずに電子出版し、ヒット作を生み出していく流れになるのではないかということです。それはまさにルパン三世のような組織のように。
補足しておくと、『電子書籍の衝撃』は2010年4月に発行された本です。4年前から電子出版の流れを予測していた恐ろしい本でして、他にも電子出版に対する可能性が語られていました。
では、予言書の発行から4年経った今、その流れはどうなったでしょうか。Amazon本のベストセラーランキングから確認してみましょう。
まずは2013年のAmazonの本のベストセラーから。
1.
永遠の0 (講談社文庫)
百田 尚樹2.
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
村上 春樹3.
30日できれいな字が書けるペン字練習帳 (TJMOOK)
中塚 翠涛4.
海賊とよばれた男 上
百田 尚樹5.
オレたちバブル入行組 (文春文庫)
池井戸 潤6.
医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法
近藤 誠7.
オレたち花のバブル組 (文春文庫)
池井戸 潤8.
海賊とよばれた男 下
百田 尚樹9.
艦これ白書 -艦隊これくしょん オフィシャルブック-
角川マガジンズ10.
大泉エッセイ ~僕が綴った16年 (ダ・ヴィンチブックス)
大泉洋, あだち充11.
ロスジェネの逆襲
池井戸 潤12.
パズル&ドラゴンズ モンスター図鑑 (ファミ通の攻略本)
ファミ通App13.
伝え方が9割14.
できる大人のモノの言い方大全
話題の達人倶楽部15.
艦隊これくしょん -艦これ- 鎮守府生活のすゝめ Vol.1 (エンターブレインムック)16.
スタンフォードの自分を変える教室
ケリー・マクゴニガル, 神崎 朗子17.
ももいろクローバーZ責任編集 『ももクロぴあ vol.2』 (ぴあMOOK)
ももいろクローバーZ18.
DUO 3.0
鈴木 陽一19.
ファミ通App NO.007 Android (エンターブレインムック)20.
とびだせ どうぶつの森 超完全カタログ
引用元:過去の Amazon ベストセラー > 2013年の本のベストセラー
2013年は有名な出版社から出された本ばかりで、『電子書籍の衝撃』で語られていた未来にはほど遠い状況です。100位までランキングを確認しても同じような状況です。
では、2014年のランキングはどうでしょうか。
1.
嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見 一郎, 古賀 史健2.
まんがでわかる 7つの習慣
フランクリン・コヴィー・ジャパン3.
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録
コンプティーク編集部4.
TRF イージー・ドゥ・ダンササイズ DVD BOOK ESSENCE (宝島社DVD BOOKシリーズ)
TRF5.
永遠の0 (講談社文庫)
百田 尚樹6.
ファミ通App NO.017 Android (エンターブレインムック)7.
女のいない男たち
村上 春樹8.
妖怪ウォッチ オフィシャル攻略ガイド (ワンダーライフスペシャル NINTENDO 3DS)
山田 雅巳, 水野宏建, 利田 浩一9.
妖怪ウォッチ2元祖/本家 オフィシャル攻略ガイド (ワンダーライフスペシャル NINTENDO 3DS)
レベルファイブ, 利田 浩一, 山田 雅巳10.
長友佑都体幹トレーニング20
長友 佑都11.
長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい (健康プレミアムシリーズ)
槙孝子, 鬼木豊12.
自重筋トレ100の基本 (エイムック 2630)
比嘉 一雄13.
今日の治療薬 2014 解説と便覧
浦部 晶夫, 島田 和幸, 川合 眞一14.
DUO 3.0
鈴木 陽一15.
ファミ通App NO.013 Android (エンターブレインムック)16.
銀翼のイカロス
池井戸 潤17.
学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話
坪田信貴18.
イニシエーション・ラブ (文春文庫)
乾 くるみ19.
TOEICテスト新公式問題集〈Vol.5〉
Educational Testing Service20.
自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心
東田 直樹
引用元:過去の Amazon ベストセラー > 2014年の本のベストセラー
こちらも2013年と同様、大手出版社から出された作品ばかりで大きな変化はありませんね。強いて言うなら、100位以内にネットから火がついて有名になった『サラリーマン山崎シゲル (ポニーキャニオン)』が入っているくらいでしょうか。
それでも、佐々木さんの提唱する「個人連合による出版作品」はランクインしていません。それ以前に、まだまだ紙による出版が上位を占めていて、電子出版すら根付いているとは言えません。
唯一、成功したと言える事例は鈴木みそ先生によるKindle漫画くらいです。
参照:電子書籍出版で稼ごうと思っているブロガーは「ナナのリテラシー」を読んで勉強しましょう
参照;Kindleで1000万円稼いだ漫画家の「ヒットが読めないから、好きな事を書くしかない」が意味するもの
では、こうした閉塞感のある状況下でどうやって電子出版の流れができていくのでしょうか。
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ブロガーと若手編集者による電子出版を試金石に
それには僕が携わっている、電子書籍プロジェクトが1つの試金石になると思っています。
参照:ブロガーさんと一緒に『新しい生き方』をテーマに電子書籍を出します : 生み出す人になる(電子書籍サービスWOODY社長のブログ)
プロジェクトの概要は、9人のブロガーと1人の編集者、そして3人の賛同者から成るチームで「生き方」に関する電子書籍を出版するものです。これこそ、まさに佐々木さんが提唱していた新しい出版のスタイルだと思うのです。
佐々木さんの言葉を借りれば、「マイクロインフルエンサー」である書き手と、フリーではありませんが「腕利きの編集者」が出版社を介さずに出版するスタイル。
もちろん、このスタイルの成功には「コンテキストの構築」など色んな要素が必要ですが(コンテキストについては別記事で説明します)、今後の参考になり得る結果を出して、新しいモデルの可能性を出版界に提示していきたいです。
近年、個人の力がより重視されており、結束すれば潮流を生み出せる時代だと強く思っているので、ぜひとも前例を作っていきたいです。
参照:個人メディアを持つ者同士が結束し「祭り感」を創り出せば、「潮流」は生まれてくる。 | 隠居系男子
ですので、新しいスタイルの出版に興味のある方はぜひ注目していてください。なお、コンテキスト構築の一環として読者の方からの質問も募集していますので、こちらのフォームから質問して頂けるとありがたいです。
「生き方」について役に立つものを提供できるように取り組んでいる最中ですので、楽しみにしていてください。
ではまた!