佐々木俊尚氏による著書「電子書籍の衝撃」にて語られていた「アンビエント」という概念、これが非常に面白く、書き手として生きていく若者はぜひとも知っておくべきだと思ったので紹介します。
これから書き手として、どう稼いでいくかについて考えさえられます。
書き手を目指す若者は「アンビエント化」している事を認識せよ
まずは、「アンビエント」の意味について説明していきます。本書ではiTunesを例に出して語られていました。
「アンビエント」という言葉があります。「環境」とか「偏在」とか訳されたりしますが、私たちを取り巻いて、あたり一面に漂っているような状態の事です。
iTunesは、音楽をアンビエントにしました。
佐々木氏は、アンビエント化によって音楽を聴く際のCDやMDをセットする手間がなくなったと語っています。
iTunesによってそうした手間のほとんどは消滅し、いつでもどこでもどんな場面でも、自分が音楽を聴きたいと思った瞬間に手元のデバイスから魔法のように楽曲をひきだすことができるようになりました。これがアンビエント化です。
アンビエント化によって音楽を聴きたい人はいつでもどこでも瞬時に音楽にアクセスできるようになった、つまりCDというパッケージではなく、また別のカタチで音楽を消費されるようになったのです。
そして、アンビエント化は色んな音楽との出会いを誘発して、「40年前の音楽」と「最新の音楽」に同じタイミングで出会えるようになったと言います。
フラットな目線で品定めされるようになった音楽作品
実際、iTunesの中では40年前の曲も最新の曲も同じページに並んでいることがありますよね。それを見たユーザーは時代背景を気にせず、「1つの音楽」として認識するようになります。
このように、iTunesという音楽市場に並ぶ作品は1つの作品として認識され、どれもフラットな目線で品定めされることになるのです。これはCDというパッケージでは考えられないことでした。
それまでは、各時代で流行るべき曲がマスメディアによって強烈にプッシュされ、その時代のヒット曲のみを聴いていました。しかし、今は違います。作品がフラットになり「自分の好みか」など独自の軸で様々な年代の曲を聴くようになっています。(軸には「アーティストが好き」「この系統が好き」「友人が勧めてくれたから好き」など多々あります)
音楽で起きている変化が「書き物の世界」でも起きている
そして、音楽で起きているアンビエント化が出版でも起きているのです。それは、前述した「CD」を「紙の本」に「iTunes」を「Kindleなどの電子出版できるプラットフォーム」に置き換えると分かります。
これまでは、その時代に即したヒット本がマスメディアの広告を通じて読み手に流通していました。読み手が作品を手に取るキッカケはほぼ大きな組織からの広告だったのです。しかし、Kindleによって「自分の好み」を軸にして幅広い年代の本を知り、読めるようになっています。
つまり、アンビエント化によって出版の世界にも「リパッケージ」「作品のフラット化」がもたらされました。そして、この変化が書き手の未来を大きく作用すると感じたのです。
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読み手はどのようにして作品をを知るようになったか
では、アンビエント化によって読み手はどのようにして作品を消費するようになるのでしょうか。これは読み手の行動の流れから考えていきましょう。ざっと行動を分類すると以下のようになります。
①何らかのキッカケで作品を知る
②ざっと目を通して読みたいと思う
③全て読んでみる
ここで大事なのは、①の部分なのでこの1つに絞って考えてみましょう。
読み手はどのように作品を知っていくのか
「①何らかのキッカケで作品を知る」、つまりいかにして読み手は自分が読みたい作品を見つけていくのかという話です。
前述したようにアンビエント化によって読み手の選択肢は増えましたから、マス広告の影響力はそれほど強くないでしょう。現に、僕は広告で紹介された作品ではなく、ブログやTwitterで知った作品を多く読むようになりましたから。
本書で佐々木氏も以下のように語っています。
リパッケージは、マスモデル化とは逆の引力として働きます。
なぜならリパッケージによってかぶせられる新たな外殻は、「売れている」「人気作家である」といったマスモデル的なパッケージではなく、「自分にとって面白いか」
「今興味のあることに内容が近いか」
「自分の人生との接点があるか」
「自分が参加している場で盛り上がっているコンテンツか」といったコンテキストだからです。
そうしたコンテキストは、マスメディアやランキングではなく、小さな圏域でしか流れません。そういう小さな圏域でこそ、同じような好みの本を探しやすくなるのです。
つまりアンビエント化によって引き起こされるリパッケージは、コンテキストの流れる圏域にまでミニマル(最小化)される。
そしてこのようなミニマル化した情報圏域は、いまや日本の社会にも大きく広がっています。
それがソーシャルメディアです。
ソーシャルメディアとは、Twitterやブログのことですね。これは現代でまさに僕が体験していることです。
それ故、作品を見つける際はソーシャルメディアでの「コンテキスト」が非常に重要だ、と。
そして、僕がコンテキストという考え方で重要視しているのが「なぜこの本を読む必要があるのか」「自分の人生と接点があるか」という2つです。
参照:「コンテクスト・文脈って何?」「ああ、ファンからもっと愛してもらうために必要なアレだよ」
重視しているコンテキストを軸に読んだ2冊
では、2つのことを重視して選んだ本とは何か。
「「Chikirinの日記」の育て方」と「イケダハヤトはなぜ嫌われるのか?」です。
まず「Chikirinの日記」の育て方はなぜ選んだか、それはちきりんという有名ブロガーがどんな考えでブログを運営して来たかを知るためです。これは、ブログで生活している僕にとって重要事項ですからね。
次に「イケダハヤトはなぜ嫌われるのか?」を選んだ理由。それは、イケダさんというメンタルの強い先輩ブロガーが如何にして周りの声と闘ってきたかを知るためです。独立してから、そうした対処の必要性が出てきたので、参考にと思って購入したのでした。
「両者が構築したコンテキストに魅せられた」のが購入の決め手
そして、2冊ともその存在を知ったのは各々のブログ。両者のブログは頻繁に読んでおり、両者がブログに込めている思いを良く知っています。だからこそ、本を購入したのです。
これは2人の書き手により構築されたコンテキストに見せられて、僕が本を購入したとも言えます。すなわち、今後読み手が課金する要因となるのが「書き手のコンテキスト」なのです。
佐々木氏の言葉を借りれば
ソーシャルメディアにどう情報を提供し、どうコンテキストの構築を支援していくのかということが、これからの出版ビジネスにとって最も大きな課題となっていくのは間違いありません。
という事になります。
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「コンテキストを構築しながら作品をアピール?ん、これブログじゃね?」
では、最後に本題です。
これから書き手として食っていく若者が知っておくべき姿勢でしたね。
前述した通り、自分の背景や生き様を公開してコンテキストを構築していく事は必須です。その上で、電子書籍として作品を公開していく。そこでマネタイズしていく、と。
でも、ちょっと考えてみてください。これから電子書籍で稼いでいくのは難しいと思いませんか。だって、電子書籍プラットフォーム「Kindle」ではコンテンツの価格が下がっていくのは間違いないのですから。
参照:米Amazon、定額読み放題「Kindle Unlimited」正式サービスイン
これは月額9.99ドルで電子書籍とオーディオブックが読み放題となるサービスです。日本ではまだ始まっていませんが、日本での提供開始が始まるのは間違いないでしょう。
そんな環境下で、コンテキストを構築した上で電子書籍を出版しても儲かるはずがありません。
ネット上に作品を公開する場を持って活動
では、どうやって稼いでいくか。
ネット上に作品を公開する場を持てば良いのです。まさに僕がやっている「ポエム的ブログ」のように。
僕はプロブロガーとして生活している先輩方と違い、生き様を書く「ポエム・コラム」的なブログを書いています。
参照:20代ブロガーのポジショニングマップをつくってみた。22個のブログです。
それは、先輩方がやっているように「専門な情報を客観的に発信するスタイル」よりも、「思った事を書くスタイル」の方があっていると分かったからです。ですので、僕がどのように考え、生きているかという事をメインに書いています。
これこそ、これまで語ってきた「コンテキストの構築」になるわけです。
コンテキストを構築した上で「ブログ収入+支援」が理想
「生き様」という主観的な事を書いているため、このブログには僕の生き方に共感してくれる読者の方がいます。おそらく、そういった読者の方は僕が「活動資金にしたいので支援してください」と言えば、支援してくれるでしょう。
まるで、書籍を購入する感覚で。
つまり、自分の生き様をネット上に公開してコンテキストを構築すれば、ブログとしての収入以外に「支援」という名目での活動資金が得られるのです。
こうした「ブログ収入 + 読者からの支援」といスタイルがこれからの書き手には重要なのではないでしょうか。
アンビエント化を考慮し「コンテンツ販売」しないモデルを
書き物としてのデジタルコンテンツが値下がりしていく中、「ネット上にホームとなる場を持って活動していく」、そんなスタイルがこれから定着していくはずです。
ですので、書き手として食っていこうと思うなら、紹介したスタイルに挑戦してみてください。コンテンツを売っていくスタイルは、アンビエント化によって通用しなくなりますので。
ではまた!