本記事の前編として、Jリーグの試合ダイジェストがYouTubeで視聴できる事を紹介しました。今回はこれをコンテンツの作り手の観点から考えていきます。
コンテンツ制作者にぜひ考えてほしい内容です。
サッカーというリニアなコンテンツさえもノンリニアに
前編は以下の記事を参照されたし。
参照:【Jリーグ好きに朗報】YouTubeで試合のダイジェストが見れる!各チームの公式チャンネルをチェック
まずは、「リニア・ノンリニア」の概念についておさらいしておきましょう。
「リニア」なコンテンツとは何か、から説明しましょう。リニアとは線形のことです。メディア・コンテンツの消費に即して言えば、リニアなコンテンツとは、初めから終わりまで一直線に連続した形で見てもらえることを想定したコンテンツのことになります。
最も「リニア」なコンテンツ形態の典型が映画です。映画は、これ以上は考えられない! というくらいに「リニア」志向に振り切られたコンテンツの形態です。
ノンリニアなコンテンツの特徴とは何かと言えば、リニアの逆です。
つまり、制作者ではなく、読者側に時間軸のコントロールが委ねられており、最初から見なくてもいいし、どこからどう見ても成り立つように断片化されてバラバラになっているコンテンツということになります。
引用元:「ノンリニア」から考えたWebでウケる文章と読み手のわがままな姿勢 → 田端 信太郎著「MEDIA MAKERS」
今回取り上げるサッカーで言うと、これまでリニアなコンテンツだった「サッカーの視聴」がネットでのダイジェスト化によって、ノンリニアなコンテンツになってしまったのです。
圧倒的なリニアコンテンツだったサッカー
これまでサッカーは間違いなくリニアなコンテンツとして消費されてきました。サッカー好きな僕もテレビやスタジアムでそうやってサッカーを見てきましたからね。
サッカーは前半の立ち上がりから、試合終了のホイッスルまでの流れを楽しんでこそ面白さが分かるコンテンツでした。そして、試合が動くたびに最適な戦術が施され、それが醍醐味になるのです。
さらに、均衡しているゲームならば後半30分以降のドキドキ感はたまらないものだったはずです。このドキドキは連続して見ていたからこそ得られるものでした。
しかし、この楽しみ方がネットでのダイジェスト化により、薄らいでいるのです。
ネットでのノンリニア化はサッカー番組のダイジェスト以上
前述したダイジェスト配信により、サッカーをリニアなコンテンツとして消費する人は減ってきているように思います。実際、僕がそうですからね。
これまではスタジアムに足を運んだり、テレビで90分間試合を見たりしていたのに、最近はYouTubeで済ませるようになりました。もはや、「やべっちFC」などサッカー番組のダイジェストすら見ません。
これまで、サッカーをノンリニアに消費する手段としてサッカー番組のダイジェストがありました。しかし、サッカー番組のダイジェストとYouTubeのダイジェストではノンリニアの度合いが大きく異なります。
サッカー番組の場合は、流す映像は既に作られた尺で見てもらう事が可能ですが、YouTubeのダイジェストはユーザーがいくらでも視聴時間を調整する事ができます。
例えば、数分ほどのダイジェストでも「ひいきにしているチームのプレーだけを見たい」という理由で1分以内で消費されてしまう可能性だってあるのです。
サッカーというコンテンツすら、そうやって断片的につまんで消費されるようになっているのです。
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これからは「断片化されたコンテンツ」を集客手段に
今後はサッカーのように、これまで「通し」で体験することに価値があるとされたリニアコンテンツさえもどんどんノンリニアになっていきます。そして、ユーザーが手軽につまめるように断片化されていきます。
これは一見、リニアコンテンツが衰退していく負のサイクルかと思ってしまいますが、そうではないのです。僕はこれがある種、チャンスだと思うのです。
サッカーの例を出すと、断片化されたダイジェスト映像(ノンリニアコンテンツ)がネットに流通していけば、それまでサッカーを見ようともしなかった人が目にする機会が増えます。
それによって、サッカーをリニアコンテンツとして消費しようと、スタジアムに駆けつける人だって増えるかもしれないのです。これは、音楽業界でSpotifyが起こしている現象と同じです。
参照:デジタルコンテンツはこのまま無料に向かうのが正しいのか?
Spotifyは『CDに代わる収入源』じゃない。集客エンジンだ。
つまり、ネット上のノンリニアなコンテンツをリニアコンテンツの入り口にするということです。ですので、これからは元々リニアだったものがノンリニア化していると危惧している作り手はこの視点をもっておくと、新たな道を開く事ができるかもしれません。
ノンリニアなコンテンツがウケる時代だからこそ、「断片化」を重要視してみてはいかがでしょうか。
ではまた!