あなたは『アンネの日記』という不朽の名作について、どんな印象を持っているでしょうか?もし、可憐な少女が客観的に当時の状況を綴った作品だと思っているのなら、それは違います。
『アンネの日記』は信念を持った少女の人間味溢れる感情を綴った作品です。この姿勢は書き手として非常に参考になりますよ。
『アンネの日記』にはドロドロした感情が綴られていた
前回紹介した『世界を変えた10冊の本(池上彰著)』という本の中で、世界中の人に影響を与えた本として『アンネの日記』が紹介されていました。
参照:池上彰さんのキュレーション力は53万です。→『世界を変えた10冊の本』
ご存知の方も多いと思いますが、『アンネの日記』は迫害に遭ったユダヤ人の少女アンネが隠れ家で生活していた時のリアルな描写を綴った本として世界中で読まれています。僕も学校でその存在を習い、「当時の客観的な情報を綴った本」という認識でいました。
しかし、この認識がちょっと違うようなのです。池上彰さんの本によると、この本ではアンネという少女の生々しい、そしてドロドロした素の感情も綴られていたのです。
当時、ユダヤ人差別は日々激しくなり、ユダヤ人の子どもは、一般の学校に通うことができなくなります。アンネも、ユダヤ人の中学校に通っていました。日記には、当時の同級生に関する強烈な描写が出てきます。
たとえば、成績優秀なクラスメートについては、「お勉強はとてもよくできますけど、それはガリ勉するからで、頭はそれほどいいわけじゃないんです」と
アンネがあまりに厳しい描写をしている対象者については、本として出版される際、編集者の判断で、イニシャルにされました。
J・Rについては、まるまる何章分書いたって、まだ書きたりません。なにしろ、自惚れ屋で、陰口好きで、意地悪で、威張り屋で、陰険で、偽善家
アンネの容赦ない筆致は、隠れ家に入ってからも衰えません。同居生活をすることになった人たちへの批判は、あるときは激しく、またあるときは同情に満ちた表現に変化します。隠れ家での長期生活で精神的ストレスに悩むことで、筆致も変化するのです
神様はけっしてわたしたちユダヤ人を見捨てられたことはないのです。多くの時代を超えて、ユダヤ人は生きのびてきました。そのあいだずっと苦しんでこなくてはなりませんでしたが、同時にそれによって強くなることも覚えました。
弱いものは狙われます。けれども強いものは生き残り、けっして負けることはないのです!
『アンネの日記』の事実を提示した上で、池上さんはこのように語っています。
どうですか。あなたがイメージしていたアンネ・フランクとは、まったく別の人間の姿が登場してはいませんか。
可憐な少女アンネではなく、強きユダヤ人女性アンネ・フランクの誕生です。
幾多の苦難にも耐えてきたユダヤ民族の強さと誇りは、ここから来ているのですね
おそらく皆さんは、『アンネの日記』にこれだけ強くてドロドロした感情が綴られているとは思わなかったでしょう。僕自身も驚きました。
しかし、こうしたドロドロした感情やそれに基づく信念があったからこそ『アンネの日記』が世界中の人々に影響を与えた本に成り得たのではないでしょうか。
これは書き手としている人間なら、理解できるはずです。
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人を動かす文章はドロドロした人間らしい感情を詰め込んだもの
拡散している記事を見ていて、反響を呼ぶ記事には共通法則ある事に気づきました。それは「動物・美女・良い話」「考察が鋭い分析記事」「人間の素直な感情が読み取れる記事」です。
例えば、
「動物・美女・良い話」
参照:死んでも一緒。天国で再会を果たした愛犬と学者の「世界一幸せな骨格標本」
「考察が鋭い分析記事」
参照:今後のメディアを考えるうえで知っておきたいデータ10選 – メディアの輪郭
「人間の素直な感情が読み取れる記事」
参照:就活失敗して良かった
参照:会社は学校じゃねぇんだよ|松村淳平ブログ
参照:世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ
といった感じです。
ここで注目してほしいのは「人間の素直な感情が読み取れる記事」です。参照した3つの記事全てに、口にはしづらいようなドロドロした感情・人間らしい感情が詰め込まれています。まさに、『アンネの日記』で綴られていたように。
特に、数年の引きこもり生活からLIGというイケてる企業に内定した菊池くんの「世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ」からは狂気じみたものを感じます。サイトからは、彼のコンプレックスがこれでもかというくらいに感じられました。
そして、そんなコンプレックスもといドロドロした感情があったからこそ多くの人の心を動かし、内定までに至ったのです。
実際、僕も20代の若造だからこそ「好きなことを仕事に」というキャリア論を語るべきという記事を書いた当時、抱いていたモヤモヤをストレートにぶつけました。その結果、多くの人に読んでもらう事ができました。
この「ドロドロした感情」というのは非常に大事なのです。最近は「ポエム」と揶揄されがちですが、ドロドロした感情こそが人々にインパクトを与え、『アンネの日記』のように人々の記憶に残っていくのだと思っています。
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ポエムが少ない今だからこそドロドロした感情を書き続けていきたい
現在、コンプレックスやドロドロしたものを詰め込んだポエム的な文章は少ないです。
参照:20代ブロガーのポジショニングマップをつくってみた。22個のブログです。
やはり専門性の高いマイルドな文章が多いのも事実です。しかし、そういった状況だからこそブルーオーシャン化しているポエム的な文章を書く意味があるのかなと思います。
『アンネの日記』のように、人の心を動かして記憶に残り続けるのは「人間らしいドロドロした感情を詰め込んだ文章」です。ですので、ブロガーを筆頭とする書き手は「ドロドロ」を意識して文章を書いてみてはいかがでしょうか。
普段、マイルドな記事を書いている方が取り組むと、一層面白いものができるはずですので。
ではまた!