なかなか盛り上がりを見せない電子書籍。しかし、中には1000万円稼いだ漫画家もいます。その1人が鈴木みそ先生。そんな鈴木先生が小沢高広先生と「売れる電子書籍漫画とそうでない漫画の傾向」を語っていました。
以下、該当箇所を2人の著書『電子書籍で1000万円儲かる方法』から引用してみます。
ネットと相性のいい電子書籍だからこそウケるテーマ「ガジェット」
まず、第一に電子書籍ユーザーの特性を理解する事が大切のようです。
小沢 現時点でのマーケティングっていうところだと、ウチやみそさんがウケたのは、我々の読者の多くが、ネットと相性がよいお客さんだったから、というのもあると思うんです。
ガジェットだったり、テクノロジーだったり、ネットワークだったりに興味をもっている人が好みそうなテーマの作品を、僕らもみそさんもよく描いているわけですから。
鈴木 そもそも、Kindleを買っている時点で、いわゆる一般的な読者層じゃないわけですよ。電子書籍の読者というのは、広告用語でいうところのアーリー・アダプター層なんです。
そう考えると、普通の書店の売れ筋を意識しても、電子書籍では興味をもたれない可能性が十分にある。鈴木みそっていう作家の認知度も、電子書籍ユーザーと一般の読者との間では、10倍以上くらいは差がありそうだし。
確かに、電子書籍端末を持っている時点でデジタルに精通していますし、そういった層にウケそうな電子書籍は人気が出そうです。RSSでニュースを読んでいる層に向けて描く感じですね。スマニューやグノシーではなく。
他にも、特定のジャンルは電子書籍で売れやすいとも。
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グルメは鉄板「1話完結でページ数が短いから」
そのジャンルがグルメ。
鈴木 電子書籍のマンガ部門で売れた作品でいえば、KDPではないんですが、去年は『孤独のグルメ』がめちゃくちゃ売れていましたね。
1話完結で、それぞれのページ数が短いところとか。グルメものっていうのは、その条件を満たしやすいんですよね。そういった意味では電子書籍向けのジャンルといえるのかもしれないですね
前回の記事でも書いた「短い作品の方が売れる」という傾向に合致するグルメ漫画。細切れで読まれやすいジャンルはこれからも売れていきそうです。
参照:電子書籍は200ページ300円よりも5ページ100円の方が売れる
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1話完結でまとまりのある作品は売れる
そして、上記の傾向を横展開する方法も語られています。
小沢 それは言えると思いますね。とはいえ、さっきの話とつながるんですけど、やはり完結している作品のほうが有利だと思いませんか?
僕は、小林まことさんの『劇画・長谷川伸シリーズ』は、もっと電子書籍で売れてもいい作品だと思いますよ。1冊ごとに話が完結しているけれど、シリーズで共通するキャラクターが出ていたりして。そういうまとまりのいい作品は、伸びそうな気が
例に出ている『劇画・長谷川伸シリーズ』はこんな風に1巻で完結する作品です。
上記の前提を踏まえると、コンビニで売ってる『三丁目の夕日』なんかも電子書籍向きですよね。
少女漫画は不利なジャンル
逆に、不利なジャンルについても語られていました。
小沢 きちんとリサーチしているわけではないから、確かなことは言えませんけど、やっぱり少女マンガ系は不利なジャンルといえるんじゃないでしょうか。
鈴木 難しいでしょうね。ユーザーの比率的に、まだ女性はあまり電子書籍ユーザーがいないでしょうから。
確かに、周りに電子書籍で漫画を読んでいる女性っていないんですよね。ただし、LINE漫画は別です。
小沢 スマートフォンの普及率を考えると、性差による売れ筋の違いは、年々少なくなってきているとは思いますけどね。まだ厳しいでしょう。ただLINEマンガ(※注24)みたいにアプリ内で購入できるスタイルなら、いけるのかも。
実際、LINEのタイムラインには「LINEマンガで読みました投稿」が女性から流れてきます。ただし、Kindleストアで読まれる事を考えると、少女マンガはグルメほど優れていないでしょう。
スマホでも電子書籍は読めるんですが、知らない人も多いようですし。
参照:意外と知られていない!スマホでもKindleの電子書籍が読めるという事実
決済、端末の面で子供向けマンガも難しい
さらに、子供向けマンガも厳しいとの見方が。
小沢 あと、これも現時点では当然のことですが、子ども向けのマンガは難しいです。端末を持っている子どもの数が少ないだけでなく、子どもはクレジットカードを持ってないから、自分で電子書籍を買うことができない
決済というインフラがなければ、課金の壁を越えてもらう事はできませんからね。この分野で売ろうとしたら、プリペイドカードによる決済を推しだしていくのが良さそうです。
”電子書籍最適化”したマンガは売れる
紹介してきたように、売れる電子書籍作品を生み出すには「電子書籍」の特性を理解して最適化するのも有効です。IT、デジタルに関心のある層に向けた作品を描くとかですね。
それを考えると、IT業界で働く人が好みそうなマンガは電子書籍で人気が出そうです。例えば、『スティーブズ』、『王様達のヴァイキング』など。
他にも、グルメマンガのように一話完結でスキマ時間にサクッと読めるものも人気が出そうですね。『女子かう生』や『ピューと吹く!ジャガー 』などなど。
こうした電子書籍最適化を進めるのも得策でしょう。ただし、気をつけるべき事があります。それは本当に描きたいものを描くということです。
小沢 最初にも言いましたが、みそさんや僕らが電子書籍の分野でウケたのは、現状の電子書籍のメインユーザーになっている、アーリー・アダプター層の関心事と僕らの関心事が、たまたまマッチしていたからに過ぎないわけですよ。
電子書籍でヒット作を生み出している小沢先生も鈴木先生もユーザーの好みに寄せていったのではなく、自分たちの好きな事がたまたまユーザーにもハマっていたわけです。
ですので、「ユーザーの特性を理解する」「自分の本当に好きなものを描く」。この2つを実践した人が電子書籍のヒットメーカーになっていきそうです。電子書籍で売れる作品を作ろうと思っている方は参考にしてみて下さい。
ではまた!(提供:らふらく^^)