9月15日に開催されたTHE BIG PARADE 2014 ザ・ビッグ・パレード2014という、音楽の話題について議論するイベントに参加してきました。
参照:デジタル時代のヒットチャートとは? Silvio Pietroluongo x 野本 晶 x ジェイ・コウガミ
ここで語られたことで、特筆すべき点を紹介します。
音楽チャートの現状と未来について語られたセッション
STACKED BAR CHART / Lauren Manning
セッションの登壇者は以下の通り。
Silvio Pietroluongo氏(以下:S)
売り上げなど音楽のヒットチャートを提供し、業界内で大きな影響力を持つ「Billboard(ビルボード)チャート」のディレクター。
なお、ビルボードのチャートは「The Hot 100」「Billboard 200」「Artist 100」のようなメジャーなものから、「Billboard Twitter Real-Time」「Streaming Songs」「Billboard Twitter Top Tracks」「Social 50」などソーシャルを加味したものなど様々あります。
野本晶氏(以下:野本)
音楽ストリーミング配信サービス「Spotify」を運営するスポティファイジャパン株式会社のLicensing & Label Relations Director。
Spotifyにおけるチャートもアーティストに大きな影響を与えています。
ジェイ・コウガミ氏(以下:ジェイ)
世界の最先端音楽テクノロジー情報を配信するブログ「All Digital Music」を運営しているブロガー。個人的にいつも更新を楽しみにしているブログです。
セッションでは、ジェイさんが司会となってチャートサービス運営者2人に現状と将来の行く末を質問していく形式でした。
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Spotifyのチャートについて
Spotifyには売り上げだけに依存しないチャートがあるという話の中で、野本氏が以下のように語られていました。
口コミによるチャート。セールスとは上がってくる曲が違う。
いろんな音楽との出会いを提供している。
ノルウェーでラジオ番組でのチャートにSpotifyを導入。
それは違法DLに対抗するためにレーベルと押し進めた。その結果、音楽売り上げ全体に対して7割くらいのシェアになった。ラジオ番組に、民主的なチャートを採用して20%レイティングが上がった事例も。
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音楽シーンへの新しいムーブメントについて
ジェイ:
(チャートを通して)タレントが育っているか?
S:
チャートにYoutubeを組み込んで、人気を博すアーティストが出てきた。
バイラル力が大きいのは想定外だった。
それまで全く知られていなかったアーティストの台頭も。
そうしたバイラルソングに起きている。ユーザージェネレートでもチャートが変わった。
より多くのアーティストがチャートに上がるようになった。
野本:
Spootifyではロード(Lorde)というスターを生み出す事例が。USにて。
ショーンパーカーがプレイリストにいれてヒット。
2位になってから、Spotifyで1位、その次にBillBoardで1位というストーリーだった。
この事例の詳細は以下の記事を参照されたし。
参照:ショーン・パーカーのSpotifyプレイリストが世界的なヒット曲「Royals」ブレイクのキッカケだった! Spotifyから音楽が拡がる新しいカタチ
バラバラだった音楽チャートが1つに繋がってきている事について
S:
お互いのチャートが影響しあっている。ブレンドしている。
1つの(チャートでの)成功が他の成功に連鎖していく。
Twitterと連携したチャートをどう活用していくか
S:
Twitterの場合は、Hot100(チャートの種類)に入れているかと言うとそうではない。
チャート開発には1年以上費やした。
Twitterチャートも堅調に成長している。データをどういう切り口で見せていくか。
データの中には複雑なものがある。見た人にとってわかりやすいようにアップデートしている。
Next Big Soundについて
Next Big Soundとは、Web上での音楽アーティストの注目度を測って解析するサービスのことです。
MySpaceでの再生数やFacebookでのファン数、Twitterでのツイート数に基づき注目度を分析し、人気の推移や他のアーティストとの比較を表示します。注目の歌手や次にヒットしそうなアーティストに興味がある人におすすめです。
引用元:世界中の歌手や音楽アーティストの「注目度」が数値でわかる!お気に入りアーティストの立ち位置や次にヒットしそうな新人がわかる音楽分析サイト
このサービスについて、セッションでも話題に上がりました。
S:
Next Big Soundとはソーシャルの計測プラットフォーム。
業界にアーティストの動きをトラッキング。
ソーシャルでどんな話がされているか、位置情報、レコード会社などに対してはどういうユーザーにリーチすべきかを提供。授賞式に対して何が起きているか。どういうアクティビティにしているのか。
Echo Nestによる解析ツールの提供について
なお、解析ツールについてはSpotifyで導入している事例も紹介されました。それがEcho Nestの提供しているもの。
参照:Spotify、音楽ビッグデータ大手Echo Nestを買収:競合も導入する音楽レコメンデーション・プラットフォーム、APIは今後も無料提供
野本:
Spotify上では、おすすめしてくれるエンジンのためのデータ。
2つのジャンルが違う曲でも、プレイリストの関連から似た傾向と判断されれば、おすすめしてくれる。
2つの間にあるんじゃないかなという曲をレコメンド。
日本のチャートはどうなっていくか
S:
会社によっては全てのデータをシェアするわけではないけど、アーティストの人気を正当に評価できるものへ。
Hot100も日本のものはチェックしていく。
ビルボードジャパンのゴールはファンがどういう動きをしているか追っていくこと。デジタルの売り上げが伸びていくでしょう。
音楽がもっと身近になる。
野本:
ユーザーの興味を反映したチャートが人気になる。
(野本氏が)レコード会社にいたとき、音楽の認知手段として1番多かったのはテレビ。2番が口コミ。これってソーシャルと変わらない。今と昔も同じ。ただ、今は数値化して分かりやすくなった。
ソーシャルチャートに対してアーティストからのリアクション
(以下は海外での反応)
S:
レーベルからの反応はポジティブ。
アーティストの売り上げに寄与。
音楽業界のいまを反映すべきチャートであり続ける。
変化に対応できた事で、良い反応が貰えている。
野本:
日本のアーティストは海外に出て行こうとしている。
UKで上位ランクしたBABYMETALなど。口コミチャートで1位になる日本人のお手伝いを考えられる時代。
参照:BABYMETALが米ビルボード“World Albums”チャートで首位獲得の快挙、来年1月に初のたまアリ決定
日本人が海外のチャートで上位に来る事も可能に
ジェイ:
ビルボードで日本人が1位になる事も可能か?(USチャートなどで)
B:
ソーシャル50など。
YouTubeのプラットフォームはグローバルだから、アメリカでフォロワーが増えれば可能。自然発生していくのでは。レーベルからのプロモーションというよりも。
会場からSpotifyの今後について質問
ここからは質疑応答。
会場からは「Spotifyの将来性はディスカバリー機能にあるのでは?今後についてどう考えていますか?」との質問が。
野本:
Spotifyのプレイリストが一番聴かれる源。
プレイリストを最適化していく事で、音楽との出会いが加速されるはず。Spotifyでジャンルは気にしていない。関係ないジャンルでもオススメする。
音楽業界では、たまたまカテゴライズして名前をつけられるだけ。
幅広い音楽との出会いを目指す。ロケーションやその人の行動。
オフィスで聴いている曲と家で聞くのは違う。そうした嗜好性を組み込んでいる。色々試している。
【僕はこう思った】これからの新しい売れ方について
これからはレーベルのプロモーション発信ではなく、チャート発信のスターも生まれていきそうです。Twitterなどソーシャルで話題になり、ビルボードなどのチャートに取り上げられ、海外で有名になるというケースも考えられます。
ですので、今後はこれまでは異なるプロモーション、戦略が重要になりそうです。その際は、海外で成功しているBABYMETALやきゃりーぱみゅぱみゅの事例が参考になりそうです。
参照:きゃりーぱみゅぱみゅ海外展開成功事例から作り手にとって重要な姿勢を学んだ →「レーベルとマネジメントの両輪による世界征服」 #ビッグパレード
ではまた!