本日は、情報発信をナリワイとする人間として情報を受け取る際の注意事項を書いておきます。ネットの情報を鵜呑みにするのは本当に危険という話です。
友人がある問題に巻き込まれたので紹介します。フィリピンで日本人が違法労働で逮捕された報道がありましたが、事実と異なっていたんです。
ということで、詳細を該当記事とともに紹介していきます。
翻訳しただけの記事が事実と認定される怖さ
該当記事は、「フィリピンで日本人60人逮捕 不法就労の疑い 電話対応代行業 「半年間の実務研修中だった」と主張」というタイトル。内容は、以下の通り。
要な労働許可を得ずに就労していたとして、同国中部セブの「ジャパン・インタートレード・コールセンター(JICC)」社で勤務していた日本人約60人を、不法就労の疑いで逮捕した。
この記事では「日本人が逮捕された」と記載されていますが、日本人60人の中に僕の友人が含まれていたのです。彼がメッセージをくれてこの記事に気づくことができました。
誤解を生むような表現でニュースになってたけどさ、、
他だと、現地の速報記事を翻訳しただけの記事もありました。
今回摘発された日本人達は、おそらく労働に関する法律442条違反での起訴と有罪判決後の国外追放に直面するだろう、と担当者は加えて述べた。有罪判決を受けたものは3ヶ月から最大3年の懲役に服し、同時に1000ペソから10000ペソの罰金も科せられる。また会社にも罰金命令が下るだろう。
引用: 【続報あり】セブ島で日本人が60名逮捕される【違法労働の疑いでJICCが強制捜査されました】
「日本人逮捕」のニュースは海外情報に敏感な方にとって、衝撃的だったようで、各メディアで話題になっていました。そして、どこも「日本人逮捕、違法労働」とセンセーショナルな内容を押し出して、記事にしていました。
しかし、僕の友人に直接聞いた話だと、ずいぶんと内容が違っているのです。ということで、実際にこの件に直面した友人から送ってもらった一次情報を掲載します。
以降は、友人から送ってもらった原文です。一部、見出しや太字強調がありますが、そのまま載せています。日本のメディアが報じた情報と比較して読んでみてください。
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日本人たちは何の罪も犯してないし、そもそも逮捕もされていない
今回俺らが不法就労容疑で逮捕されたなどいろいろ記事にされているけど、まず最初に結論から言うと「俺らは何の罪も犯してないし、そもそも逮捕もされていない」
まず事件発生の金曜日に話はさかのぼる。金曜の16時ごろ仕事の合間にトイレに行こうとしたときフロアの入口に見たこともないフィリピン人が10人ほどたまっているのが見えた。
最初はなんだろうなーぐらいで思って軽く流してたんだけど、それからちょっと経ってあるインターン生に「あれ、そういえば授業行かないの?」って聞いた。
インターン「いや、行きたいけど出れないんです」
そのときまだ事態は全然把握できてなかったけど、”何かの調査”でフロアの外には一切出てはいけないということを聞かされた。
それから彼らが来てどれくらいか時間が過ぎたとき(一時間は経ってなかったかと)に社長室からうちの代表が出てきた。ここで初めて代表の口から彼らがNBIという組織であると明かされた。
彼らはある人物から労働局へのコンプレインにより調査をしにきたと言っていると。そのコンプレインの内容は「この会社の日本人は就労許可が出てないのにもかかわらず仕事をしている」とのことだったそうだ。
そしてそれを労働局に伝えたのが以前うちの会社で働いていたフィリピン人スタッフ二名によるものだということ。それから代表は再び社長室に何名かのNBIの人と一緒に戻った。
そのあと、彼ら(以後NBI)が俺らに対して日本人とフィリピン人スタッフは離れろ。日本人はこっちに集まれと指示を出してきた。その次の指示はすべてのパソコンをシャットダウンさせろと。
俺らがパソコンをシャットダウンさせたのちのNBIの行動は、パスポートと身分証を見せろとのこと。彼らは日本人一人一人のパソコンを押収しながら身分証の確認もしていった。
そして俺のターンなった。
「パスポートと身分証持ってるか?」
俺が渡したのはパスポートと”AEP”のカード
この話でかなり重要になってくるこの”AEP”
“AEP”というのは外国人雇用許可証のことである。
これは”労働局”から発行されるものであり、これを取得後に”移民局”で手続きをして完全に就労査証の手続きが完了となる。
(参照 http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/phv5.html)
とりあえず、俺はこのAEPとパスポートを持っていかれた。
それから何時間か待ち続け、たしか22時ぐらいだったかな?
場所を移動するという話を聞かされた。
その場所はNBI。
実は待っている時間にいろいろ噂が流れていたのだが、今日はNBIに拘束され解放は明日になると。
それから僕らは彼らの用意したバスに乗ってNBIに連れて行かれた。
到着して最初にさせられたのは”何かの用紙”にそれぞれ個人情報やらいろいろ記入する作業だった。
その紙に出てきた単語”arrested”
つまり逮捕に関する用紙だった。
どこで、いつ逮捕されたのかなどいくつかの記入欄があった。
そしてその紙を記入した後、僕らがさせられたのはその紙に指紋を取られ、そして犯罪者のように名前の札を持たされて正面、左右の写真を撮られた。
これ大丈夫か?という疑問を持ちながらも、みんなNBIの指示にただただ従った。
そして手続きを待っている間にまた新たな噂が流れた
来週(月曜)まで解放されないと
そこで代表から話があった
明日朝一でみんなのパスポートを裁判所に持っていき手続きを行うと。
そこで手続きが通れば明日(土曜日)には解放される。
土曜日は裁判所が12時までしかやってないので急いで手続きを行うと。
申し訳ないが今日はここで泊ることになりますと。
そして男性は外のベンチで、女性は施設内に部屋を準備してもらって一夜を過ごした。
それから朝になりどういう状況か分からないまま時間がすぎ午後を過ぎた。
もう12時もとっくに過ぎているし何の報告もないので正直またNBIで夜を明かす覚悟はできていた。
しかし、16時ごろ代表から話があった
裁判所へこれから移動すると
そこで最後に手続きを済ませてそれで解放されると
それから裁判所へ移動した
移動はバス
NBIからの要求は「ここにいる全員を一台のバスに乗せろ」との指示だったそうです
それから裁判所で一人ずつ証明書のようなものにサインをし、土曜の19時ごろすべての手続きが完了した。
これで解放されると言われ、最後に代表から話があるからということでタクシーで帰るメンバーも含め代表の指示でバスに乗るように指示があった。
なぜかNBIの人も乗り込んできた。
全員が乗って代表が話始めたとき、急にバスが動き出した
静止しても止まらない。
話によるとNBIまで行くことになったとのこと。
え?なんで?
それからNBIに到着し、代表から一言
「みなさん、どんなことがあってもバスから降りないでください」
そしてNBIに到着し、社長とフィリピン人の秘書だけがNBIに呼ばれた。
外には銃を持った人が何人かバスを囲んでいた。30分ほど経っただろうか。
代表が戻ってきてようやく終わったとの報告がなされた。
結局僕らはトータルで28時間ほど拘束された。
時系列でざっくり話すとこんな感じ。
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この件の背景「窃盗した元従業員からの密告→NBIの過激な調査」
では裏でどのような話があり、どういうことがあったのか。
まずこの事件の始まりは冒頭でも記載したように解雇された二人の従業員の密告?から始まった。
彼女らの日本人が許可証を持たずに働いているという話から今回NBIは労働局からの調査依頼として動いたとのことだった。
俺らの会社はインターン制度を取り入れており、英語の授業料と寮の滞在費を無料にする代わりに正社員と一緒に働いてもらっている。
フィリピンで海外の人が働くには就労許可証(AEPやSWPなど)が必要だが、インターン生には無給で業務を行ってもらっているため「特別就学許可証」(SSP)があれば労働できるということをすでに移民局などに確認を取っており、これらのルールに従い手続きを行っている。
つまり俺らの会社は正社員もインターン生もみながこれらの必要な手続きをきちんとしていて、働いている日本人のすべてが法にそった許可証を申請し所持している。なのに今回、僕らは逮捕として扱われた。
実はNBIというところは非常にハラスメントなどが多いところなのだそうだ。
金曜の夜に来て翌週まで拘束させようとしたこと、俺らに対し犯罪者のような扱いをしたこと、最後のバスでNBIまで連れて行き最後まで遅延行為を行ったこと。
今回俺らの会社は弁護士や周りの助け、そしてもちろん必要な手続きをきちんとふんでいたことでアンダーテーブルでのお金のやり取りは一切なしに解放されることができたが、多くの外国企業はお金を使って解決するケースが多かったりするらしい。
とりあえず、今回の件で思ったことは、この件は俺らがグレーゾーンだったために起こったことではなく、どの企業でも起こりうることが、たまたまうちの会社に起こってしまったことだ。
他のブログでは俺らの会社をあーだこーだ言ってる人がいるけど、もしフィリピンにある企業に対し一斉摘発が行われれば、正直俺らの会社のようにスムーズに解放(アンダーテーブルなしに)される企業がどんだけいるのかと思う。
ちなみに俺がAEPを持っているのを分かっていて拘束し、身分証まで押収したのはほんとにありえないことらしい。これが法的にどうなのかまでははっきり分からないがNBIという組織に目をつけられたら本当にやっかいということがあらためて分かった。
最後にこの事件の発端である労働局へコンプレインをしたフィリピン人スタッフが解雇された理由は不祥事を起こしたことが原因だったそうだ。
フィリピンでは会社を辞めた人間が今回のように労働局に訴えることが少なくないという話を以前から聞いたけど、実際本当に起こって正直びっくりしている。
今回長文になったけど、今回の件で伝えたいことは海外で働くということはこういうイレギュラーな事態が誰にでも起こりうるという認識を持った方がいいということ。
これは企業だろうが個人だろうが何かをきっかけにこういうことが起こる可能性は十分にありえる。
海外で働くことはこういうリスクもあるということも知っててもらいたい。
あー海外って何が起こるから分からないなー笑
以上!
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ここまでが、友人に送ってもらった原文です。日本での報道と大分内容が違いますよね。
バズ記事、リツイートされまくったつぶやきを信じてしまう怖さ
日本メディアの記事と友人の原文を比べて感じたのは、権威のあるメディアであっても100%事実を伝えることは難しいんだな、ということです。
どう考えても、友人の話と日本のメディアが報じた情報には違いがあります。特に、「NBIの過激な調査」「6ヵ月以内での就労なら特別就労許可(SWP)があれば可能となっている」という情報が報じられていないため、フェアではない報じられ方をしています。
6カ月以内のルールが黒か白かは良くわかりませんが、「日本人が逮捕された」を中心に報じて、それ以外の情報を付与しないのはどう考えても偏っています。
しかし、それがメディアなのです。
メディアの情報には偏りがある
メディアの情報には絶対に偏りがあります。それは、規模の大きさに限らずです。さらに、ソースも曖昧なことだってあります。
翻訳記事をたどってみると、NBIスタッフの証言をもとに記事化されています。仮に、そのスタッフが「日本人が大嫌い」という人だったら、話す内容は大きく偏るでしょう。それは逆もしかりです。
こうした、ソースとなった情報にも気を配らなければ、誤った情報をつかまされることになります。
1万シェアされたからといって真実とは限らない
昨今、SNSが普及したこともあり、インフルエンサーの投稿やリツイートやいいね!されまくった情報が「真実」と受け止められがちです。
しかし、それが本当なのかは一次情報を辿らなければわかりません。しかも、SNSの良くない点で「過激なものほどシェアされやすい」というものがあります。
なので、SNSでは人を刺激するものをたくさん目にするようになります。そうなれば、多くの人に見られやすい(バズる)ように、偏った編集が入ってしまいます。事実とかけ離れたものになってしまうんですね。
誰かが「パクリだ!」と言えば事実になってしまう恐ろしい世界
なので、こうした情報を信頼せずに、できる限り一次情報にあたって、信ぴょう性を確認した上で、シェアなりをしてほしいと思います。
特に最近は、誰かが「パクリだ!」と言えば、それが事実になってしまう恐ろしい世界になっています。こうならないようにも、皆さんには気をつけて欲しいと、この一件を通じて感じました。
最後になりましたが、情報提供してくれた友人には大変感謝しております。本当にありがとう!
ではまた!(提供:らふらく^^(@TwinTKchan))
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