いやー、見事でした。久しぶりに読み物で感動してしまいました。『新編わらしべ長者』、活字中毒者にとっては非常に名作でした。
だって、知らない人はいないのではないかという名作『わらしべ長者』にこれだけ深い考察を入れて、25歳の男を惹き込ませる作品にしてしまったのですから。重要なことを学ぶためにも、作り手の皆さんにはぜひ読んでほしい作品です。
見事な妄想力でわらしべ長者を進化させた名作
『新編わらしべ長者』は北海道経済産業新聞の連載小説で、一般的に知られている『わらしべ長者』をその語られた時代背景から調査し、新しい歴史軍紀小説として再構成したものです。
僕たちが知っているわらしべ長者というのは「ある若者がワラを手に入れて、それを基に価値ある物と交換していき、最終的には豪邸を手に入れて、お金持ちになる」というもの。
教えとしては、「相手のニーズによっては自分の持っている物が低ランクでも、相応の価値を持つ」といった感じです。絵本にもなっているくらいですから、内容は非常に軽く作られています。
しかし、『新編わらしべ長者』では作り手の巧みな妄想力や当時の時代背景の調査力により、肉厚な内容に仕上がっているのです。
まず、出だしから原典(一般的に知られているわらしべ長者)とは異なります。
時は平安の中頃。
時代は貴族支配から武家支配への胎動期であった。一人の青年が、京の都で途方に暮れていた。青年は源氏に連なる東国の貧しき武家の嫡男だ。
保元、平治といった大きな動乱はなくとも、様々な宮廷の中小の権力闘争の中、無用に駆り出された。そのため一部の表舞台の武士以外の家々の経済状況は逼迫する一方であった。
そんな中、青年の家も没落し武家としてもっとも貧しい部類だ。おまけに、今回の歴史に名の残らないような宮廷騒乱で、親子で上京し、父はあっさり落命してしまった。
青年は途方に暮れた。
「家に戻っても、財貨も無い。生活の糧も無い。いかにするべきか。」そこで、青年の出来る決断は、とにもかくにも、まずはこの騒乱から鎌倉に戻ることであった。
青年の決断はすばやかった。逃走の道中、武家であることが露見しないよう、鎧刀、父の形見を隠し京の都を去った。
こんな書き出しで物語が始まるのです。そして、生きていく術を見出すために青年は、当時力を持っていたお寺のお坊さんを頼ることにします。
武家の次期家長として育てられたため、世俗のことには無頓着だ。生活のための財貨の生み出し方も思い付かない。そこで、青年が頼ったのが、奈良の著名な長谷寺の分寺として最近建立された鎌倉長谷寺だ。
今でこそ、寺社は宗教上のシンボルとしてしか取り扱われないが、当時、寺というのは、中国大陸からの最新の学問や技術を持ち込む大学としての機能が重要視されていた。
政治的側面においては、地域や中央のシンクタンクとして機能し、また、経済活動においては、まさにコンサルタントとして機能してきた。
鎌倉長谷寺のような、著名な寺社が建立されたのであれば、武門一辺倒の武士に対して軍略や経理といった知見のレクチャーを、鎌倉一円の武士に対して、おこなっていたことは想像に難くない。
お寺では、貨幣流通の基本原理や、それを活用して儲けた過去の成功事例を学んでいきます。現代でいう所のビジネススクールですね。そして、最後の授業で自分の商売を考えることが課せられたのです。
偶然、つかんだワラから商才を爆発させていく
しかし、学論を学んだだけの青年は何も思いつかず、途方に暮れてしまいます。そんな中、寝床だったワラ敷からワラを手にします。そして、ワラを活用できないか考慮し編み出したのが、虫を結びつけて子供のおもちゃとして販売すること。
これを上流階級が良く通る寺社仏閣で販売することにしたのです。さらに、神仏の御加護のあるものと宣伝文句を付け加えて販売した所、上手いように売れていったのです。
そこから、青年の快進撃は始まります。彼の評判を聞きつけた豪族の命により、貴重な薬剤の原料をさばく事業で儲けるなどして、お寺で学んだ知識から商才を爆発させます。
途中、幾多の試練がありながらも青年は財を築いていき、最終的には原典と同じ結末である「家を手に入れたお金持ち」になるのです。
結局、始まりと結論は同じだが、、
そして、最後はこのように締めくくられていました。
その、人生の始まりが、わらしべにあったと、青年が人に語ったことにより、わらしべ長者といわれるようになった。
その後、青年も余裕が十分にでき、長谷寺の講義料をしっかり払った。さらに、こうした数々の知識を、こまめに長谷寺に相談し、相談料として御布施をその財貨の中から払い続けた。
現代でいうところのシンクタンクとの長期契約である。そして、代々、青年の一族は長谷寺の檀家として名を連ねていく。その御布施の支払いぶりから、後世の人々は、その幸運ぶりを信心のためと囁きあったという。
これで『新編わらしべ長者』は終了です。物語の始まりと終わりは原典と同じ結果です。しかし、その過程が大きく異なります。
『新編わらしべ長者』ではお金持ちになるまでの途中経過が、当時の時代背景を鑑みた考察と共に肉付けされ、本当にあったのではないかと思うほどリアルにアップデートされているのです。
これを読み終えた瞬間、鳥肌が立ってしまいました。何となく読んだにも関わらず、この記事をすぐに執筆したくなり、いま筆を進めています。
それくらい衝撃が走る本です。そして、クリエイターにはこうした妄想力が必須であると思ったのです。
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原典を基に妄想力を活用して面白くしていく
この世にありふれた作り物の「型」はある程度決まっています。言ってしまえば、この世のコンテンツは冷静に考えると、「伝えたいこと、同じじゃん」と思わざるを得ない物ばかりです。
それが顕著なのが自己啓発本です。自己啓発本の内容は超有名な『7つの習慣』という本に集約されます。しかしそれでも、1年に数本はヒットする自己啓発本が生まれるのです。
なぜでしょうか。
それは、作り手が原典を基にして独自の妄想力を武器に、ヒットし得る作品を作り出しているからです。例えば、夢をかなえるゾウ。
自己啓発本の内容をゾウが教えるという斬新な発想
この作品は発行部数が数百万と、爆発的なヒットを記録した自己啓発本です。内容は、色んな自己啓発本に書いてあることです。
しかし、この本はゾウ(神様)を登場させて、ダメな主人公に教えを説いていくという状況を妄想して、大衆ウケするフォーマットで人生における重要な教えを伝えているのです。
これこそまさに、作り手の妄想力が功を奏した事例です。普通は、自己啓発本の教えをゾウが教えるなんて思いつきません。作り手の秀でた妄想力により、大ヒット作になったわけです。
こうした例は他にもあります。それが、もしドラこと『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』。
女子高生でもドラッガーが分かるように、という秀逸な妄想
これは、ビジネス界で有名なドラッガー氏の教えを女子高生が理解していくという設定を入れて、わかりやすく解説する本です。これも大ヒット作になり、漫画化、映画化されました。
もしドラ以前にもドラッガーの教えの解説本はありました。しかし、女子高生でも理解できるようにという設定により、誰でも分かるようなフォーマットで教えを伝えているのです。ここにも、作り手独自の妄想力が働いています。
普通は、ドラッガーと女子高生を組み合わせるなんて思いつきませんよね。この作品のヒット要因も間違いなく、作り手の妄想力にありました。
このようにして、僕たちブロガーもといクリエイターは世にありふれたメッセージを独自の妄想力で面白くしていく必要があるのです。
メッセージなんて大差がないから、妄想力で勝負する
正直、らふらく^^のような、意識の高いと言われる情報を届けるブログであれば、メッセージはどこかのメディアと似てしまいます。でも、そんなの当たり前なんです。この世にコンテンツは溢れているのですから。
その前提を受け入れてからが腕の見せ所なんです。そのありふれたメッセージを妄想力でどうやって面白くしていけるか。ネット上で拡散する記事とそうでない記事の違いはそこです。
伝えている内容なんて、どこも大差ないです。それでも、アクセスに差が出るのは、メッセージに独自性を加えるための妄想力が異なるからです。
ですので、クリエイターには「ありふれたメッセージをありふれていない独自のコンテンツに変えるための妄想力」が必要なのです。これ、モノづくりの世界では非常に重要なことですので、作り手は意識していきましょう。
妄想力、めちゃくちゃ大事ですよ。
ではまた!(提供:らふらく^^)