今後キュレーションアプリに求められるのは「小売り」としての機能ではなく、「卸」としての機能です。メディアの収益を考える上でも外せない考えですので、チェックしておきましょう。
このままの形でメディアは幸せになれるか?
最近、いろいろとアグリゲーションやキュレーションアプリ(以下、アグリゲーションもひっくるめてキュレーションアプリと呼びます)の話が盛り上がっています。そんな中、今回は記事を配信するメディアの観点から考えてみようと思います。
その観点とは、「キュレーションアプリに記事を配信しているメディアの収益面」です。では、この点について考える前にキュレーションアプリの位置づけを確認しておきましょう。
以下の図をご覧ください。なお、本記事では考えやすいように「小売り」「卸」「メーカー」と分類してそれぞれの役割を定義しています。
一般的な構図は、「メーカー」となるメディアが記事を作成して、独自のアルゴリズムを用いたキュレーションアプリ「小売り」に配信されるという流れです。ここで言う「小売り」はショッピングモールのイメージです。
では、「メーカー」であるメディアは記事配信により、収益の面でどんなメリットがあるのか。
まず、1つとしては「流入してきたユーザーによる自社メディア内での広告による収益アップ」です。キュレーションアプリがトラフィックをもたらしてくれますからね。
そして、もう1つが配信先のキュレーションアプリ内での広告収入還元。これはSmartNewsとGunosyが提供しています。
参照;Gunosyが媒体社に広告収益を還元するコンテンツ配信を開始、全体で成立可能なエコシステムの構築へ
2. Smartモードへの広告掲載による収益の拡大
Smartモードで表示されるコンテンツ内に、媒体運営者様が指定する広告の掲出をサポートしています。
参照:SmartNewsが提供できるメリット | Media Partners
2つのことから考えると、基本的には広告によるマネタイズ頼みになり、キュレーションアプリに配信したとしても大きな収益アップには繋がりそうにありません。つまり、Yahoo!ポータルに記事を配信していた時代と構造は何ら変わらないのです。
実際、「有限会社ノオト」の宮脇淳代表も以下のように語っています。
私自身、ネットメディア単体で利益を出すことは全然考えていません。これは、「みんなの経済新聞ネットワーク」のほかの新聞も似たような考えじゃないかと思います。ネットでニュースを出しても、残念ながらたいしたお金にならないんですよね。広告はかなり価格を下げないと売れませんし、新聞のような宅配システムによる実売利益がありませんから。
そんな状況で、広告頼みの構造を変えるために、僕が期待しているのがキュレーションアプリの「卸」的な役割です。
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Vingowによる「卸」でメディアは稼げるか
その「卸」となるのが、キュレーションアプリ「Vingow」です。「vingow」でマスメディアの主役交代を狙う──JX通信社米重氏や自動要約機能で差別化——ビジネスパーソン向けニュースアプリ「Vingow」の狙いを読む限り、Vingowは以下のような働きをすると考えられます。
つまり、専門的な情報を配信するメディア(メーカー)の記事を様々な情報を集めるアプリ(小売り)に卸す役割。これをVingowが担うという訳です。そして、専門メディアは配信先のアプリから直接お金をもらうという流れです。
なお、卸す先は「人間が人力で編集してニュース配信しているアプリでなければなりません。(アルゴリズムのみに頼るアプリは該当せず)
実際、開発者の米重さんはこのようにVingowの戦略について語っています。
そこで考えたのがコンテンツの売買という第三の収益源なんです。課金でも広告でもない第三の収益源をコンテンツ売買というものを通して提供する
例えば日本だと業界ごとにたくさんメディアがありますよね。たとえば金型業界でも金型新聞ってのがあるぐらいなので、ニッチなメディアがものすごくたくさんある。
でも、そういう企業が苦境に立たされて潰れたりしているんですね。今はYahoo!ニュースみたいに発信に徹して取材しない媒体も沢山出てきているわけですから、そういったところに販売出来ればいいんです。
引用元:「vingow」でマスメディアの主役交代を狙う──JX通信社米重氏
まだ、はっきりとしたやり方は明示していませんが、Vingowが「卸」としての存在感を高めていく事は間違いないでしょう。
ですので、今後は新しいマネタイズに挑戦する「Vingow」に注目しておくと、今後さらに面白くなっていくキュレーションアプリの動向を追う事ができます。
なお、こうした「小売り」ではないキュレーションアプリの動きがありましたら、また報告させて頂きます。
ではまた!